長崎街道の旧家で過ごす自分時間

長崎街道の旧家で過ごす自分時間

観光名所を足早に巡る旅はちょっと苦手...。そんなあなたにぴったりの場所があります。今年の2月、佐賀市内の長崎街道にリノベーションして活用が始まった「旧森永家・旧久富家住宅」。歴史ある町並みに佇む2つの古民家は、大切に守られてきた歴史や伝統、人の想いが交差する素敵な空間でした。いつもよりちょっと丁寧にゆっくりと、自分の時間を過ごしに来ませんか?

※この情報は2015年6月時点のものです。

旧森永家住宅・旧久富家住宅とは?

 佐賀市柳町の長崎街道沿いは、「佐賀市歴史民俗館」として明治や大正期の旧家や銀行の建造物が立ち並ぶ、趣のある通りです。今回は佐賀市の古民家再生プロジェクトにより生まれ変わり話題を集めているという「旧森永家住宅・旧久富家住宅」を訪ねました。
 森永家は、寛政年間に初代森永十助が始めた煙草の製造で繁栄した家。のちに呉服店へ転身し、昭和9年まで営業していました。その住宅は明治前期の貴重な町屋建築遺構として今に残り、今回のプロジェクトによって居宅は鍋島緞通手織工房として、白壁の北蔵は和紅茶専門店、南蔵は佐賀の伝統工芸品店として、歴史のバトンが受け継がれています。
 一方久富家は県下有数の履物問屋として発展し、昭和55年頃まで営業が続きました。その住宅は、履物商を営んでいた久富亀一が大正10年に柳町に移転して建てたもの。亀一は、建物裏の作業所で下駄の製造も行い、息子である二代目・吉二は、大分県日田市にも下駄の製造所を設けて朝鮮半島へ販路を広げるなど、事業を拡大したといいます。
 2階建ての旧久富家住宅には、県内のクリエイターや事業者が営む6つの店舗が集結。往時の雰囲気が残る空間で、楽しくわくわくするたくさんのモノやコトが待っています。


佐賀市歴史民俗館には、レンガづくりの洋館「旧古賀銀行」や、佐賀旧城下町に残された町家建築の中で最古とされる旧牛島家などの建造物が集まります。


白壁の蔵が印象的な旧森永家住宅。煙草の製造で繁盛し、「富士の煙」という銘柄が佐賀の名物の一つだったとか。大隈重信も愛煙したそう。


旧森永家住宅とともに「22世紀に残す佐賀県遺産」に認定されている旧久富家住宅。建物内には当時の看板も掲げられているので探してみて。

■DATA
○旧森永家住宅 住所/佐賀市柳町4-7
○旧久富家住宅 住所/佐賀市柳町4-16
○アクセス
<JR>JR佐賀駅から徒歩約25分
<バス>呉服元町バス停下車、徒歩約3分
<飛行機>有明佐賀空港よりリムジンバスで「県庁前」下車、徒歩約10分
※参考ホームページ
佐賀市の観光はこちらを参考に

和の装いでそぞろ歩き

 ノスタルジックな長崎街道、古き良き古民家の佇まい...。このシチュエーションを着物で楽しめるプランがあると聞き、最初に訪ねたのが旧久富家住宅の「よそほひ処 二葉」です。母体は、昭和23年に創業し、美容室や衣装室を展開している老舗。店内には年代物の着物や打掛けが展示され、今でも色褪せない美しさに目を奪われます。
 今回着物を体験してもらったのは、韓国出身で日本在住歴4年のべ・ヒョンジュさん。好きな着物を選んで着付けまでしてもらえる「街歩きプラン・ぶらりコース」を選びました。「色や柄で自分のイメージが全然変わりますね」と、べさん。着物と帯の組み合わせにも悩みつつ、スタッフのアドバイスをもらいながら選んでいきます。
 もうこの時点で女心がくすぐられるというもの。10分ほどで着付けが終わると、心なしか所作がしとやかに。着物は16時までレンタルでき、古民家巡りを着物姿でゆっくり楽しめるのもうれしいところです。
 「女子会のノリで楽しんでください」とスタッフが言うように、着物はもっと気軽に日常に取り入れられることを実感。いつもと違う自分との出会いもまた楽しそう。


「どれもきれいな着物で迷います~」と、べさん。この迷う過程も楽しく、女性同士ならとても盛り上がるとか。友達同士や家族の割引プランもありますよ。


着付けの手際の良さに驚きつつ、帯も素敵に決まり、いよいよ街歩きへ。ちなみに後ろの打掛は、昭和30年代のものとか。見事な輝きです。


長崎街道の町並みと着物はとても絵になります。歴史的建造物群の壁や、門、窓枠など、何気ないものでも撮影ポイントになり、写真に残したくなります。

■DATA
<よそほひ処 二葉> (旧久富家住宅内)
○営業時間/11:00~17:00
○店休日/月曜日、年末年始
○プラン
うきうき街歩きプラン
ぶらりコース 女性3,500円 男性4,000円 子ども(2歳~)4,000円
※着物(小袖、訪問着、長着、長着+羽織、浴衣)から1着、帯、着付け
 着物(晴れ着)、帯、着付け
※足袋、履物は含まれておりませんのでご持参いただくか、レンタル(足袋500円・草履1000円)をご利用ください。
○予約受付/080-8356-3440 ※時間外はメールにてご予約ください。 futaba560@gmail.com
○ホームページ/http://b-futaba.com/

築90年を超える空間の妙

 外観をできるだけ復元し、昔ながらの天井や梁、看板などを生かして町屋建築の趣を伝える旧森永家住宅・旧久富家住宅。外観を眺め、中を歩くにつけ、この空間で過ごすだけでも価値があることに気づかされます。低い天井やきしむ廊下、一方で吹き抜けの大空間があったり、土間や長い縁側があったり。建築の技術があり、連綿と続く人の営みがあってこその空間に、小さな感動を覚えます。
 また、多彩なクリエイターが集うからか、建物はただ古いだけではなく、店舗の演出やロゴマークなどがとてもスタイリッシュ。古いものと今が融合された"古民家再生"ならではの味わいが魅力です。


旧久富家住宅2階の廊下にはレトロなランプが連なり、しっとりとした風情。


旧久富家住宅1階。一画には洗練されたデザインの有田焼を販売するコーナーも。


旧森永家住宅の居宅には、懐かしい雰囲気の縁側が。外国人観光客にも好評の場所。

世界広がる、個性豊かな店舗

 さて、続いては旧久富家住宅1階のものづくりカフェ「こねくり家」。ここはランチやカフェが楽しめるだけでなく、ITの技術を使ってものづくりができる、ちょっと珍しい場所なのです。パソコンでプログラミングしてレゴブロックを動かしたり、ロボットの「Pepper」と会話したり、3Dプリンターが使えるほか、多彩なワークショップも実施しています。IT技術というとちょっと難しそうですが、小学生くらいから体験でき、むしろ子ども達の方が簡単に習得していくとか。夏休みには、小学生向けにiPadでペーパークラフトを作る体験会が予定されているので、ホームページを要チェックです。
 こねくり家の隣には、写真館「ハレノヒ」があります。「写真館と人が出会い、触れ合う場にしたい」との想いでスタジオを構え、エントランスには様々な作家の作品を展示販売するギャラリーも。
 「写真はコミュニケーション」というハレノヒでは、特別な日でもそうじゃなくても、自分や家族の写真を撮ることそのものを楽しみ、自分や家族の今を見つめたり振り返る、そんな価値を大切にしています。
携帯電話などで簡単に写真が撮れる今だからこそ、写真館で撮った写真が何を語ってくれるのか、楽しみは大きいもの。プロの手による一生ものの写真、撮ってみませんか。


パソコンにべさんの名前を入力し、「こんにちは、べさん」と呼んでくれた「Pepper」くん。ロボットと初めて会話し、そのかわいさに思わずなでなで。


こねくり家の裏手は、縁側と芝生の小さな広場。子ども達が遊べるようにと、バドミントンやボールも置いてあり、ママたちに好評です。


一見雑貨屋のような入りやすい佇まいの写真館「ハレノヒ」。古民家の中に写真館があるのは珍しく、ナチュラルで開放的な吹き抜け空間で撮ってもらえるのも楽しみの一つ。

■DATA
<こねくり家>(旧久富家住宅内)
○営業時間/カフェ11:00~18:00 ものづくり 平日11:00~21:00 土日祝日11:00~18:00
○店休日/月曜日、最終週火曜日
○問合せ/0952-37-6905
○ホームページ/http://conekuriya.com/

<ハレノヒ>(旧久富家住宅内)
○営業時間/10:00~18:00
○店休日/月曜日、不定休
○料金/スタジオ撮影+町歩き撮影 30,000円~
※その他スタジオにて1ショット撮影コースもありますので詳細はお問合せください。
※完全予約制です。お電話またはホームページの「お問い合せ」フォームより、ご希望日や人数、連絡先等をご連絡ください。
※英語を話せるスタッフあり。
○問合せ/0952-37-6905
○ホームページ/http://halenohi.com/

 旧久富家住宅の2階では、イラスト工房「Megumi」の作品たちがひと際カラフルな色彩を放っています。「好きに描いたらこうなった」と独学でたどり着いたイラストは、どれも明るくパッと目を引くデザイン。店内ではポストカードやiPhoneケース、クリアファイルなどが販売され、女性客に人気です。8月1日(土)~31日(月)まで、佐賀市の「トネリコカフェ」にて個展を開催予定。植物をテーマにした作品が並ぶのでお楽しみに。
 雰囲気は変わり、ステンドグラス工房「グラスパレット」には、上品で存在感のある作品が並んでいます。「気軽にガラスに触っていただける場所にしたい」と、ステンドグラスづくり体験も可能。好きなデザインの色付きガラスを選び、はんだ付けをこなしながら1時間ほどで制作できます。ガラスはカットされたものを使うので、ビギナーの入門編として最適。実はガラスをカットすることがとても難しく、何日もかかるそう。店内には豪華なランプもあれば、お土産に最適なストラップや鏡なども。見ていて飽きることのない空間です。
 「ideyaC3」は、佐賀市をメインに活動しているWEBディレクター江口昌紀さんによる、公開ワークスペース&ミニギャラリーです。ITやWEBに関する相談だけでなく、定期的なイベント展示なども行っていますので、クリエイティブな世界をのぞいてみてはいかが。


イラスト工房「Megumi」。自身もイラストの世界から抜け出してきたような存在感です。「もっとクオリティを上げていきたい」と、作品づくりに邁進中。


「季節感を考えながら、"自分のデザイン"にこだわっている」というグラスパレットの作品たちは、どれも洗練された雰囲気で温かみがあります。


ITやWEBで人と人をつなぐ「ideyaC3」。ギャラリーで何か発信したいクリエイターの相談にものっています。今後のギャラリーの展示については問合せを。

■DATA
<イラスト工房 Megumi>(旧久富家住宅内)
○営業時間/11:00~17:00
○店休日/月曜日、木曜日
○問合せ/090-8624-6117
○ホームページ/http://megumilkworld.wix.com/megumi

<ステンドグラスの工房 グラスパレット>(旧久富家住宅内)
○営業時間/11:00~17:00
○店休日/月曜日、水曜日、金曜日
○問合せ/090-2390-5446(11:00~17:00)
○Facebookはこちら→https://www.facebook.com/glass2015

<ideyaC3>(旧久富家住宅内)
○営業時間/11:00~18:00
○店休日/月曜日・不定休(出張・研修等で不在することがあるため、事前にお電話いただければ幸いです。)
○問合せ/080-4312-2912

選りすぐりの茶葉で愉しむ和紅茶

 そろそろいっぷくを、と訪れたのは「和紅茶専門店 紅葉(くれは)」。昔からの馴染み客も多く、全国的にもファンを持つ名店です。オープンして14年目の今年2月、今回の古民家再生プロジェクトにより旧森永家住宅の北蔵に移転オープン。吹き抜けのレトロモダンな空間で、日本の紅茶をメインに喫茶と販売を行っています。
 紅茶はすべて、店主であり日本では数少ない和紅茶ブレンダー・岡本啓さんのセレクト。豊富な品揃えに加え、驚かされるのが茶葉へ注がれたたゆまぬ愛情と情熱です。実際に茶農家に足を運び、畑の状態を確認し、和紅茶としての味を見ながら研究を重ねてきたという岡本さんは、まさに歩く和紅茶辞典。「同じ茶葉でも収穫される日や時間によっても味が違う」といい、紅茶を提供するときには、茶葉の特性によって水のブレンドまで変えるそう。
 喫茶では、おすすめの和菓子とお任せのお茶コースや、全国の生産者の名前を記した和紅茶メニューなどを用意。丁寧に注がれ抽出されたその1杯に恋してしまうような、とても豊かな世界がそこにありました。


「作り手の顔が見えるものを」と、オープン半年後には和紅茶専門でいくことを決意した岡本さん。店内では、全国から選りすぐりの和紅茶が揃います。


お菓子と紅茶セット980円。この日はレンコンロールケーキでしたが、夏からはナスのタルトなどの新作が登場予定。お菓子も紅茶に合うものを厳選。


「和紅茶がこんなにまろやかでおいしいなんて想像以上」と、感激。紅茶はお任せでも、好きなテイストを言ってもOKで、紅茶の解説も聞きごたえあり。

■DATA
<和紅茶専門店 紅葉(くれは)>(旧森永家住宅内)
○営業時間/11:00~18:00
○定休日/月曜日、火曜日
○お問合せ/0952-37-6718
○ホームページ http://www.creha.net/

永く愛される手仕事の作品たち

 旧森永家住宅の居宅は、「鍋島緞通」の制作実演を自由に見学できる「織ものがたり」。工房内では、大きな織機を前に、職人が一目ずつ糸を織り込み緻密な作業を繰り返していました。元禄時代に佐賀で生まれた鍋島緞通は、綿糸ならではの風合いが持ち味で、肌になじむような触り心地と、丈夫で末永く使えるのが魅力。工房の奥にある別室には鍋島緞通が展示され、実際に触ることもできます。しっかりとした踏み心地のものもあれば、寝ころびたくなるようなふわっとした肌触りのものも。柄は風格のある伝統柄が昔から人気で、オリジナルの現代柄にも挑戦し、色合わせや寸法、パイルによってもバリエーション豊富に作られています。
 そんな鍋島緞通のほか手作りの工芸品を紹介し、お土産としても気軽に購入できる雑貨を揃えるのがお隣の「さがしもの」です。「名尾和紙」や「肥前びーどろ」といった佐賀を代表する伝統工芸品、諸富家具のやさしい雰囲気に満ちた木工玩具など、重厚感のある蔵や調度品の雰囲気と相まって、それぞれが存在感を放っています。
 まさに、"さがしもの"をここに得たり。いいものを見て、触れて、味わい、記憶に残る旅となりました。


鍋島緞通の制作実演。1日に織ることができるのは7~8cm程度だそう。また、「パイルの長さが1ミリ変わるだけで肌触りが全然違う」という技の世界。


南蔵を改築した「さがしもの」は、2階が鍋島緞通の工房で、1階に工芸品が並びます。職人の技で手作りされた作品たちは、時が経つほどに宝物に。


高級品である鍋島緞通をもっと気軽に楽しんでもらえるようにと、オリジナルで作られた「ミニミニ緞通」は女性に人気。お部屋のアクセントにいかが。

■DATA
<織ものがたり>(旧森永家住宅内)
○営業時間/10:00~17:30(実演は~16:00)
○定休日/月曜日、第2・4火曜日
○お問合せ/0952-24-1560
○ホームページ/http://orimonogatari.com/

<さがしもの>(旧森永家住宅内)
○営業時間/10:00~17:30
○定休日/月曜日
○お問合せ/0952-24-1560
○ホームページ/http://orimonogatari.com/