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写真:暁の内装

秋の夜長は本に囲まれて… 個性豊かな“本のある宿”

本間悠
2023年09月08日


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皆さん、本読んでますかー!現役書店員ライター、本間です。
まだまだ残暑が厳しいですが、少しずつ秋を感じさせる気候になってきましたね。
秋といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋…色々な秋が頭に浮かぶと思われますが、私はもっぱら読書の秋!ということで、秋の夜長を本とともに過ごすべく、佐賀県内の宿泊できる本のある施設をご紹介します。

本に囲まれた古民家で文豪気分。

泊まれる図書館 暁(あかつき)

一軒目に紹介するのは、佐賀市の古湯温泉にある『泊まれる図書館 暁(あかつき)』さん。
宿泊は一日一組限定。築約120年の古民家を改装した一棟を貸し切って、一晩中、本を読みふけることができます。縁側付きの和室二部屋に無造作に積み上げられた箱型の本棚には1400冊の本がずらりと並び、文字通り“本に囲まれた”本好きにはたまらない空間です。

写真:暁の外観
写真:暁の玄関

市街地から車で約30分、ひっそりと山間に佇む古民家は「夜は驚くほど静か」だと、スタッフの島内さん。
部屋の中央にかけられた古びた振り子時計がカチコチと時を刻む心地良いリズム、そして虫の声や木々のざわめき…テレビや音の出るものもなく、まるでタイムスリップしたような錯覚さえしてしまう、静かで落ち着いた時間が過ごせます。

写真:暁の内装
写真:暁の内装
写真:暁の内装

絵本から小説、コミックや写真集など多種多様な選書は、九州にゆかりのある本好き70人が「自宅の本棚にずっと置いておきたい本 BEST20」というテーマで20冊ずつ選んだもの。全ての本が、誰かの特別な一冊です。

写真:本棚
写真:本棚
写真:本棚

選者別に本棚に収められているので、その並びを楽しむのもまた一興。巻末には、一冊一冊に「なぜその本を選んだのか」という選者直筆の推薦コメントが記されています。

写真:巻末の選者直筆の推薦コメント

図書の貸し出しカードには、実際にその本を読んだ利用者からの感想も書き込めるようになっていて、それらのコメントを読んでいるだけで夜が明けてしまいそう…。

写真:ゲストノート

個人的なときめきポイントは、このゲストノート!
「記念日に泊まりにきました」「本好きの両親と一緒にきました」…利用者が思い思いに暁で過ごした時間を書き残したゲストノートに目を通しながら、誰かの思い出をなぞる。これも一つの“読み物”ですよね。
訪れる利用者は、ご家族連れや一人旅まで様々。ゲストノートを振り返るだけでも老若男女問わず、県内外から幅広く利用されていることが伺えます。最近は海外からの旅行者もあるとのこと。

写真:オリジナルのタオル

暁にお風呂はないものの、そこは古湯温泉街。徒歩1分で行ける温泉施設のチケット付きなので、もちろん温泉も楽しめます。用意された浴衣に着替えて、オリジナルのタオルを持参して、古湯温泉のなめらかなぬる湯にじっくりと浸かってください。

写真:暁の朝食

宿泊者に提供される朝食をご用意いただきました。
季節の献立が並ぶ和定食は、ふっくらと焼き上げられた身の厚い焼き魚(この日は鯖)が絶品でした。ご飯はもちろんですが、提供されるお水は井戸水を利用していて、とってもおいしいですよ!持ち込みは自由ですが、希望者には夕食の提供もしてくださいます。

写真:暁の縁側
写真:本を読む様子
写真:本を読む様子

縁側で、ソファで、畳に寝転んで、時には机に向かって、そしてお布団に潜り込んで…
室内の色々な場所で、本だけを読んで過ごす時間を堪能してください。

スポット情報(2023年9月8日現在)
スポット名 泊まれる図書館 暁(あかつき)
住所 佐賀県佐賀市富士町古湯761-1
電話番号 080-7982-0222(代表)
営業時間 【宿泊】
16時から翌日11時
【図書館/カフェ】
現在昼の営業は、お休みしております。
※OPENする日はSNS(Twitter/Facebook/Instagram)でお知らせします。
休館日 不定休
駐車場 あり
アクセス ■公共の交通機関をご利用の方
《福岡空港から》→西鉄高速バス(1時間10分)→高志館高校前→<乗り換え>→清和医院前→昭和バス(25分)→古湯温泉
《博多駅から》→JR長崎本線(45分)→JR佐賀駅→<乗り換え>→佐賀駅バスセンター→昭和バス(50分)→古湯温泉
《佐賀空港から》→アクセスバス(35分)→JR佐賀駅→<乗り換え>→佐賀駅バスセンター→昭和バス(50分)→古湯温泉

■お車でお越しの方
《佐賀方面から》長崎自動車道 佐賀大和IC→国道323号を唐津方面へ(15分)→古湯温泉
《福岡方面から》福岡市内→国道263号 三瀬トンネル経由(60分)→古湯温泉

備考

泊まれる図書館 暁 (ホームページ)
泊まれる図書館 暁/佐賀 古湯温泉(Twitter)
泊まれる図書館 暁/佐賀・古湯温泉(Facebook)
泊まれる図書館 暁/佐賀 古湯(ふるゆ)温泉(Instagram)

 

泊まれる図書館 暁

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集え少女漫画好き!

唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga

二軒目はがらりと雰囲気を変えて、子どもの頃からの憧れを叶えに唐津へ向かいました。
読み切れないほどの漫画があるお家に住みたいな~なんて、妄想したことありませんか?
時に一人で、時に友人やスタッフと溢れる漫画愛をシェアしながら、憧れの少女漫画の世界に心ゆくまで没頭できるゲストハウスが、「ユーリ!!! on ICE」「ゾンビランドサガ」の“聖地”としても有名な唐津市内にあるんです!『唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga』(以下、少女まんが館Saga)には、約2300冊の少女漫画が並んでいます。

写真:少女まんが館Sagaの看板
写真:少女まんが館Sagaの外観

オーナーの池田愛子さんは、かつて東京の出版社に勤務し、現在はフリーランスで編集やライター業に従事している唐津っ子。故郷の唐津に戻ってゲストハウスをやってみたかったと語る池田さんは、仕事で縁のあった東京都あきる野市にある少女まんが館に“のれん分け”をしてもらい、少女まんが館Sagaをスタートさせました。

写真:館内の内装
写真:館内の本棚

もともとお米屋さんの精米所兼事務所だったという建物をリノベーション。改修の様子は館内のアルバムに収められていて、池田さんのお話を伺いながらどこがどんな風に変わったかを見比べるのも楽しい時間でした。手先が器用なお父さんやお兄さんに手作りしてもらったという二段ベッドは、手作りだからこそのジャストサイズ!
ベッドルームの壁に描かれた日本地図や世界地図には、利用者がどこから来たのかをピンで表示できるようになっていました。海外からのお客様も多く、世界中で愛される日本の漫画文化を実感。思わず胸が熱くなります…。

写真:館内のベッドの様子

開館日は、漫画喫茶のように利用することも可能。この日も、開館と同時に地元の中学生が訪れて、思い思いに漫画を楽しんでいました。漫画を通じて幅広い年齢層が交流する、そんなあたたかなコミュニティスペースが形成されているのは、世代を超えた少女漫画の魅力はもちろんのこと、館主である池田さんのお人柄によるところが大きいのではないでしょうか。初対面の中学生たちともすぐに打ち解けて笑顔で会話を弾ませる池田さんの姿に、「リピーターが多い」というのも納得です。

写真:メニュー看板
写真:週替わりおやつ
写真:ジンジャーエール

池田さんお手製のしょうがシロップを使ったジンジャーエールを飲みながら、週替わりのおやつ・シュークリームをいただきました。ミルクの風味が豊かなカスタードクリームは、利用者にもファンが多いそう。地元の食材にこだわった喫茶メニューは、味わい深い唐津焼の器で提供され、美味しさをグンと引き上げてくれるようです。

写真:本を読む様子
トレードマークの三日月をあしらった器や、漫画を読んでいるうさぎの箸置きなど、地元作家さんに作っていただいたオリジナルグッズも。

ゲストハウスという業態のため、通常の宿泊は18歳以上の女性に限定されていますが、貸し切り利用(お一人様から可能)をすれば男性や、ご家族でも利用できます。
現在は、BL(ボーイズラブ)漫画のみを集めた別館も準備中とのこと。

写真:館内の洗面所
写真:部屋の入口

漫画が大好きな仲間たちと、思う存分夜更かししながら、漫画談議に花を咲かせてみてはいかがでしょうか?

スポット情報(2023年9月8日現在)
スポット名 唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga
住所 佐賀県唐津市大名小路5-2
電話番号 0955-58-9781(開館日のみ)
営業時間 【宿泊】
チェックイン:14時から20時
チェックアウト:翌日11時
【喫茶/図書館利用】
14時から19時(入館:18時30分まで)
休館日 月・火・水・木(貸切宿泊は休館日も可能)
駐車場 2台(宿泊者優先)
アクセス JR唐津駅より徒歩10分

備考

少女まんが館Saga (ホームページ)
唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga(Twitter)
唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga(Facebook)
唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga(Instagram)

 

唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga

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ラグジュアリーな空間で本とお茶を愉しむ。

BOOKS&TEA 三服(さんぷく)

写真:三服の外観
和多屋別荘:提供画像

最後に紹介するのは、日本三大美肌の湯・嬉野温泉の老舗旅館である「和多屋別荘」。今年8月には、将棋の王位戦が開催されたことも大きな話題となりました。和多屋別荘は2021年に大規模なリニューアルが行われ、お茶と読書を愉しむための書店『BOOKS&TEA 三服(さんぷく)』がオープンしています。

写真:館内の本棚
写真:館内の本棚
写真:館内の本棚

店内には、「お茶」「暮らし」「学び」など、独自のテーマに合わせた個性豊かな1万冊がセレクトされています。お子様連れのお客様のための絵本や児童書、今話題の本や雑誌の最新刊までが幅広く取り揃えられ、どんな利用者にも「必ず刺さる」一冊が見つかるはず。店内の本は自由に閲覧でき、気に入った本は一部の古書を除いて購入することもできます。
BOOKS&TEA 三服は、和多屋別荘の宿泊客はもちろん無料で利用できますが、日帰りの利用や、書店のみの利用もOKです。

写真:フルーツサンド
写真:フルーツサンド

私は、同じくリニューアル時にオープンした『ローカルデリカテッセン 季設 』で、和多屋別荘プライベートブランドのサンドイッチ「No.0210」を購入しました。見ているだけで幸福感に包まれるフルーツサンドはじめ、地元のビジネスマンにも愛される和洋のお弁当など、季設で取り扱っている商品はすべて三服への持ち込みが可能です。一人掛けからボックス席、ソファやテーブル席など、使う人に合わせた様々なお席が用意されています。

写真:館内の様子
写真:館内の様子

三服は、季節限定のものも含めて、“歩茶”のメニューも豊富。(歩茶…テイクアウトで楽しむ新しいお茶のスタイルのこと)嬉野で三代続くお茶農家・副島園の歩茶を片手に、本を眺めて、フルーツサンドをかじる…。まさに至福のひと時。

写真:香りから本を選ぶコーナー

こちらは、香りから本を選ぶコーナー。用意された5種類のオリジナルブレンドオイルに合わせた本がタイトルや表紙を隠した状態で陳列されており、ユーザーはその香りからインスピレーションを働かせて本を選ぶことができます。このような新たな本との出会い方の提案は、三服ならでは。オリジナルのしおりやブックカバーのデザインも素敵で、思わず手に取りたくなってしまう…!

写真:客室の様子
写真:客室の様子

和多屋別荘は、二万坪という広大な敷地内に百を超える様々なタイプの客室を有します。案内していただいたのは、かつて和室だった一室をリノベーションした和モダンなお部屋「1126」。日本を代表する建築家の一人、故・黒川紀章氏により設計されたタワー棟の最上階からは、嬉野の町並みを見下ろすことができ、眺望も抜群です。

写真:日本料理『利休』の入口
写真:和多屋別荘が誇る「箱庭」

日本料理『日本料理 利休』にて、朝食として提供される和定食をいただきました。
個室の窓からは、和多屋別荘が誇る「箱庭」が一望できます。

写真:日本料理『利休』の和定食
写真:定食を食べる様子

嬉野といえば、とろっとろの温泉湯豆腐!朝から湯豆腐がいただけるなんて、なんて贅沢なんでしょう~。旅館の朝ごはんって、普段なら絶対にこんなに食べられない!という量が、なぜかするっと食べられてしまうから不思議ですよね。
老舗温泉旅館には新しい発見がたくさんありました。BOOKS&TEA三服で、新しい読書体験を。

スポット情報(2023年9月8日現在)
スポット名 BOOKS&TEA 三服(さんぷく)
住所 佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙738
電話番号 0954-42-0210(総合)
営業時間 【宿泊者利用】
8時から22時
【一般利用】
9時から22時(最終入場 20時)
料金

【席料】
・宿泊者 無料
・一般利用
 大人 1,100円/人、 小学生550円/人、小学生未満 無料
・お席をご利用の方には、副島園本店の歩茶(温・冷)引換券をお渡しいたします。
(宿泊者はチェックインの際にお渡しいたします)
・『ローカルデリカテッセン 季設 』のデリ商品を購入の方は席料無料
(歩茶引換券はつきません)

休館日 無休
駐車場 あり
アクセス 公共の交通機関をご利用の方
JR嬉野温泉駅よりタクシーで約5分
お車をご利用の方
嬉野ICより約7分

備考

BOOKS&TEA 三服(ホームページ)
BOOKS&TEA 三服(Instagram)

 

BOOKS&TEA 三服(さんぷく)

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三者三様、それぞれに個性的な、宿泊できる本のある施設をご紹介しました。
読書の秋。気になった場所に、ぜひ足を運んでみてください!

Google Mapの読み込みが1日の上限を超えた場合、正しく表示されない場合がございますので、ご了承ください

本間悠

歴史豊かな佐賀県は、あちこちに歴史的な建造物があり、伝統工芸をはじめとする日本文化に触れることができる場所です。趣味は読書とお酒の現役書店員が、魅力ある佐賀カルチャーの今を発信します! TwitterID:@honyanohomma

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    広い空、新鮮な食材、おいしい空気。佐賀はどこを訪れても元気をもらえます。佐賀生まれ、佐賀育ちのフリーライター。海外取材のときは、必ず佐賀の米と佐賀海苔をスーツケースに詰めていきます。一番かわいいと思う生き物は有明海に生息するムツゴロウです。

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