新酒の季節がやってきた 伊万里の酒蔵を訪ねて

新酒の季節がやってきた 伊万里の酒蔵を訪ねて

 日本酒ファンにとって、春は蔵開きが楽しみな季節。1月後半から4月にかけて佐賀県内各地で蔵開きが開催されていますが、今回は伊万里にスポットを当て、歴史ある2軒の蔵元をご紹介します。
 今や世界が注目する日本酒。佐賀の日本酒は質が高いと評判ですが、伊万里でも世界が認めた日本酒との出合いがありました。この春は、伊万里のお酒で乾杯!

※この情報は2015年2月時点のものです。

今年で10周年をむかえる蔵開き 「古伊万里酒造」

 国道202号線沿いに看板を掲げる「古伊万里酒造」。江戸時代には伊万里の港で呉服店を営む前田家として発展し、明治42年に酒造業に転身しました。3代目が名付けた「古伊万里酒造」の伝統と技法に研鑽をかけるべく、現在は4代目の若女将・前田くみ子さんと7人の蔵人が酒造りを行っています。
 今年の蔵開きは3月28(土)・29(日)に開催され、めでたく10周年。「当初はこの蔵で伊万里の酒ができていることを地元の方にもっと意識してもらいたいとの想いで始め、今では遠くからも新酒を楽しみに日本酒ファンがいらっしゃいます」と前田さん。昨年は2日間で約1500人が来場したそう。今年も蔵内と直売所を会場に、新酒の販売や「古伊万里キャンディーズ」のライブ、もち投げが開催され、試飲コーナーでは10種類以上の試飲を楽しめます。また、10周年記念として、約600本の限定酒や、有田焼の「匠の蔵」シリーズ第8弾「酒グラス」から古伊万里酒造オリジナルの酒グラスも限定50個用意。物産展とあわせて、買い物にも目が離せません。


2009年にリニューアルオープンした蔵元販売所「前(さき)」。敷地の奥に仕込み蔵があり、蔵開きの2日間のみ開放されます。


店内はレトロモダンな雰囲気。旧家で使われていた欄間や着物、前田家に伝わる「貝合わせ」のギャラリーなど、見応えがあります。


古伊万里酒造オリジナルの酒グラス。しっかりとコクがある濃醇タイプのお酒の、香りや深い味わいを楽しめるようにデザインされています。


年季を感じるこちらは醪(もろみ)を搾るための道具。舟の底に似ていることから「木槽(きぶね)搾り」といわれています。


取材時は仕込みの真っ只中。蔵のタンクの中では仕込んで3日目の醪(もろみ)が発酵の力で泡立ち、美味しい日本酒になるために準備中。


古伊万里酒造を代表する「古伊万里」と「前(さき)」。前田家の名前からとった「前」には、地元の書家がデザインしたラベルを施して。

世界が賞賛するIMARIのSAKE

 古伊万里酒造の話題として欠かせないのが、約7年前に登場した「古伊万里 前(さき)」シリーズの快挙。「全米日本酒歓評会2013」吟醸酒の部で「古伊万里 前 純米吟醸」が最優秀賞のグランプリに見事満点で輝いたのです。もともとは地元だけで販売していた「古伊万里 前」でしたが、限定流通酒として2008年から特約店のみで販売を開始し、じわじわとファンを増やしていきました。
 日本酒は米の出来や水の質に左右され、また杜氏の技、蔵人の努力なしでは醸すことのできない、日本文化そのもの。1年1年が真剣勝負であり、一つとして同じ味はありません。「一時期'日本酒離れ'が懸念されたこともありましたが、今は若い世代や女性が味わって飲むようになり、日本酒の復活を感じます。今後も国内外で日本酒の美味しさを伝えていきたい」と前田さんは日本酒への情熱を新たにしています。その昔、伊万里の港から有田焼が「古伊万里」として欧州へ輸出され、今なお世界で愛されているように、伊万里の日本酒も今まさに世界へ羽ばたいています。


国内外から384銘柄の出品数があったという「全米日本酒歓評会2013」で、グランプリを受賞した「古伊万里 前 純米吟醸」。


有田焼の伝統的な文様を施したカップ酒。こちらは2007の「Visit Japan 日本の魅力あるおみやげコンテスト」食品部門で銅賞受賞。


味の設計を決定する杜氏としての役割も果たす前田さん。今年から香港、ロンドン、中国への輸出が始まり、「海外での反応が楽しみ」と。

広い仕込み蔵に歴史が薫る「松浦一酒造」

 伊万里から平戸方面へ向かう国道204号沿いに構える「松浦一酒造」は、創業290年を誇る古い蔵。実は年中酒蔵見学ができ、ちょっとした博物館のような見応えのある蔵なのです。
 酒林を掲げた入口エリアには、古道具がずらり。「酒と米は切っても切れない仲。米作りの道具をはじめ、近所の農家が譲ってくれた珍しい古道具も。年配の方はこの入口だけで昔話に花が咲くんですよ」とは、代表取締役社長の田尻泰浩さん。足踏脱穀機や唐箕(とうみ)、ガスの自動販売機やわらすぼかきといったものまで、使い方に想像力をかきたてられる古道具にあふれています。
 仕込み蔵に入ると、1800年代の九州の古地図や、先々代が実際に乗っていたというバイク、代々使ってきた酒器や徳利の展示も。特にバイクは1954年に日本に輸入された6台のうちの1台だそうで、まさに博物館に置けそうな価値あるもの。骨董好きは時間を忘れて過ごせる仕込み蔵です。


所狭しと並んだ昔の農機具や生活道具。使い方を知るほどに先人の知恵や工夫に感心させられます。中には現役で使えるものも。


とてもハイカラだったという先々代が乗っていたバイク。修理すれば乗ることもできるとか。バイク好きにはたまりません。


仕込み蔵への入口を飾るディスプレイ。'カッパ蔵'といわれるだけに、ここからさまざまなカッパとの出合いが始まります。

カッパの神様に見守られ、世界を目指して

 松浦一酒造はカッパの蔵としても知られ、蔵の内外にカッパの飾りを見ることができます。仕込み蔵を進んでいくと、今度は日本全国から収集したカッパの小物が圧巻。形や表情もバラエティに富み、お客さんから贈られたものもあるそう。
 そもそもなぜカッパなのかというと、昭和28年にさかのぼります。母屋の屋根がえの際、大工の棟梁が梁の上に箱を発見。開けてみるとミイラのような不思議な物体が...。そして箱には「河伯」の文字。それがカッパを意味することが分かると水神様として祭るようになり、水は酒造りに欠かせないことから、酒の神、蔵の守り神として今でも大切に神棚に祭られているのです。
 その神棚は、昭和30年代まで現役だった酒造り道具の展示に続き、仕込み蔵の一番奥にあります。 '河伯様'は、不思議と見る角度で表情が違って見え、独特の雰囲気。「小さな蔵元でも18代続いたのは、河伯の神様のおかげかなと思っています。今後は地元の人が自慢できる世界一の酒を造りたい」と田尻さん。
 松浦一酒造は、世界最大規模のワインコンペティション・IWC(インターナショナル・ワインチャレンジ)の日本酒部門で2012年にシルバーメダルを、2013年にブロンズメダルを受賞。また、香港との取引も始まり、'世界のIMARIのSAKE'に向けて準備は万端です。


築250年を超えるかつての仕込み蔵。酒樽を並べるために柱が少ないのが特長で、その分太くどっしりとした梁が立派で見入ってしまいます。


日本各地で'水の神様'として親しまれているカッパのコレクション。リアルなものからゆるキャラ的なものまで多彩な顔ぶれです。


歴史が刻まれた酒造り道具の展示コーナー。より長持ちするよう殺菌効果もある柿渋を塗り、定期的に手入れをしているそう。


ついに'河伯の神様'とご対面。手足の指には水かきのあとらしきものが付いているとか。謎も夢もあり、いろいろと想像させられます。


「海外の方は日本酒に先入観がない分ストレートな意見が聞ける。今後もダイレクトに酒の味が分かる純米酒にこだわっていきたい」と田尻さん。


国内外で評価を得ている松浦一酒造の日本酒。米農家や地元の方々とコミュニケーションを密にすることを大切に、世界一を目指しています。

これも気になる!9蔵巡りが楽しめる嬉野・鹿島の蔵開き 

 3月28日(土)・29日(日)は、伊万里市以外でも2つのエリアでお酒のイベントが開催されます。酒どころ鹿島市では6蔵合同の蔵開き「鹿島酒蔵ツーリズム」を、嬉野市では第1回目となる3蔵合同の「嬉野酒蔵まつり」を開催。両会場をつなぐ無料シャトルバスが運行するので、全酒蔵を楽しむことができるんです。
 酒蔵見学や試飲はもちろん、スタンプラリーや飲み比べ、日本酒Bar、クラシックカーの展示、コンサートなど、見る、味わう、買う、が大充実。それぞれの蔵が趣向を凝らし、また一丸となっておもてなしします。
 また、鹿島では「肥前浜宿 花と酒まつり」「祐徳門前 春まつり」「酒と発酵まつり」なども同時開催されるので、風情ある街歩きも一興。嬉野はやっぱり温泉もセットで楽しみたいですね。そしてなんといっても季節は桜の頃。花にも新酒にも酔う、とびきりのひとときが過ごせそう。
 佐賀のお酒の実力と魅力を知る春の旅に、ぜひお出かけください。


毎年大盛況の鹿島酒蔵ツーリズム。昨年は即売り切れたという「オリジナル6蔵酒セット」を今年は800セット準備。公式ガイドブック付き!


昔ながらの町並みを残す酒蔵通りと桜の名所・臥竜ケ岡公園で開催される「肥前浜宿 花と酒まつり」。大道芸やフリーマーケットなども開催。


嬉野酒蔵まつりは第1回目とあって、各蔵元で気合十分。江戸の面影を残す塩田津でのイベントも計画中なのでこうご期待!

■DATA
【古伊万里酒造】
◎春の蔵開き
3月28(土)・29(日)10:00~16:00
場所:伊万里市二里町中里甲3288-1
通常営業時間(蔵元直売所「前」):9:00~19:00 不定休
アクセス:松浦西九州線・金武駅または夫婦石駅より徒歩約13分
お問合せ:TEL 0955-23-2516

【松浦一酒造】
場所:伊万里市山代町楠久312
開蔵時間:9:00~17:00
定休日:なし
料金:無料 ※事前予約の場合見学案内あり
アクセス:松浦西九州線・楠久駅より徒歩約7分
お問合せ:TEL 0952-28-0123
※伊万里市の観光情報はコチラをチェック→伊万里市観光協会
○車で来られる方へ
福岡からのアクセスが便利になりました!
西九州自動車道「唐津伊万里道路」の唐津市・北波多ICから伊万里市の南波多谷口ICまでが2月1日に開通し、アクセスが便利になりました。
酒蔵では試飲ができますので、ハンドルキーパーがいる方はご利用ください。

◎鹿島酒蔵ツーリズム2015
開催日:3月28日(土)・29日(日)
開催時間:10:00~17:00
会場:鹿島市内の酒蔵『矢野酒造』『光武酒造場』『峰松酒造場』『富久千代酒造』『幸姫酒造』『馬場酒造場』
アクセス:JR肥前鹿島駅から肥前浜駅下車、肥前浜宿酒蔵通りまで徒歩約5分
お問合せ:TEL0954-63-3412 鹿島酒蔵ツーリズム®推進協議会事務局(鹿島市商工観光課・鹿島市観光協会)
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※鹿島市の観光情報はコチラをチェック→鹿島市観光協会

◎第1回 嬉野温泉酒蔵まつり
開催日:3月28日(土)・29日(日)
開催時間:10:00~17:00
会場:嬉野温泉街『井手酒造』嬉野市塩田町『五町田酒造』『瀬頭酒造』
アクセス:嬉野温泉街まで...JR武雄温泉駅からJR九州バスで約30分、嬉野温泉バスセンター前下車、徒歩約5分
塩田町まで...JR肥前鹿島駅より車で約10分
お問合せ:TEL0954-42-3310 うれしの酒蔵めぐり協議会(嬉野市うれしの温泉観光課)
Face bookはこちら
※嬉野市の観光情報はコチラをチェック→嬉野市観光協会
○期間中はシャトルバス運行
3月28日(土)・29日(日)は鹿島市内と嬉野市内の9つの酒蔵と、各イベント会場をつなぐ無料シャトルバスを運行します。

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