小城に見つけた佐賀県遺産 深川家住宅を訪ねて

小城に見つけた佐賀県遺産 深川家住宅を訪ねて

秋の一日を、コーヒーでもいただきながらどこか静かなところで過ごしたい。そんな気分を期待以上に満たしてくれる場所を、小城に見つけました。由緒ある旧家を再生し、ブックカフェやギャラリーのほか庭園も一般に開放して幅広い世代に親しまれている「深川家・揚羽蝶」。どこか懐かしさを感じる空間で、時間を忘れて和んできました。

※この情報は2014年9月時点のものです。

中は広く町家ならではの趣き。「深川家住宅」とは?

 小城市小城町の商店が並ぶ静かな通りに、白壁の趣ある外観を見せる「深川家 揚羽蝶」。ここは旧小城城下と鎮守の祇園神社を結ぶ参道沿いに位置する、旧造り酒屋の町家です。深川家は江戸時代中頃から造り酒屋を営み、酒の小売も行っていた由緒ある家。江戸時代の小城町(上町・中町・下町)の町役も務め、明治時代から昭和前期にかけては米屋を営んでいました。
 10数年前に空き家となってからは取り壊す予定もありましたが、その歴史的・文化的な価値の高さから保存が検討され、地域活性に取り組むNPO法人「佐賀県CSO推進機構」の再生プロジェクトにより2012年10月、地域の絆づくりの基点として生まれ変わったのです。
 建物は切り妻造りの2階建て。主屋は1階に常設ギャラリーとカフェを併設し、2階は本を読みながらくつろげる「ブックカフェ」を用意。奥の蔵は一般に貸し出すギャラリーやワークショップなどの場として利用されています。


江戸時代末期、築170年~180年といわれる主屋と、明治初期建造の土蔵からなる深川家住宅。国登録有形文化財。


屋号は「深川家 揚羽蝶」。揚羽蝶は深川家の家紋で、シンボルマークとしてさまざまな意匠に使われ、お洒落。


土間の一画にあるギャラリー兼ショップ。右側の開放された窓は、今でいうシャッターとなる「蔀戸(しとみど)」。

秋をイメージした庭で小休止

 玄関を入ると、昔懐かしい土間。辺りを見渡せば、重厚感のある梁や格子戸、年季の入った古道具の数々に目を奪われます。土間を抜けると庭につながり、さっそく歩くことに。小城といえば、春は桜の名所として多くの観光客が訪れますが、秋にも気軽に足を運んでほしいと、庭園は'和モダン'をテーマにあえて秋をイメージした造りとし、いつ訪れても風情のある景色で迎えてくれます。
 庭の中央には、祇園川から引いたという小さな川が清流をたたえ、岩石で北斗七星を表現した一画も見どころ。また、和モダンを象徴するようなつくばい(手を清めるための手水鉢)や、屋根瓦を埋め込んで模様にした石畳、木々と岩の絶妙なレイアウトなど、見る場所によって印象が変わり、飽きさせません。取材した日中は暑いほどの好天でしたが、秋の涼しい夕暮れ時はより風情があるはず。これからの季節は行き時です!
 また、秋の恒例イベント「清水竹灯り[11月15日(土)~23日(日)]」に合わせ、庭園もライトアップ予定。今度は幻想的となる風景を楽しんでくださいね。


通りからはこんなに広い庭があるとは分からず、一目見て感動。ススキやモミジ、柿の木など秋の風情が満載でした。


つくばいがモダンアートのオブジェのように見える一画。庭園の中でもひと際目立ちながらも調和しているから不思議。


10月・11月は通りに面した庭側の玄関も開放され、自由に出入りできます。その玄関から入って見た風景がこれ。

ギャラリーやワークショップなどで感性を刺激

 庭園に続いてココイコ記者を刺激したのが、主屋のギャラリーや調度品です。かつて酒の店頭販売を行っていた一画は常設ギャラリーやイベントスペースとして復活。ギャラリーには有田や伊万里の注目の作家による器が展示販売され、まさに和モダンの洗練された雰囲気。お馴染みの「名尾和紙」もあり、ここは佐賀のモノづくりの魅力を発信する場でもあります。
 モダンな一方で、箪笥(タンス)や長持ちなど古民具の古めかしさも魅力。まるで現役のように生き生きとした存在感を放っています。そう、深川家住宅の大きなテーマとして掲げられているのが「OLD&NEW」。確かに、「古いけどなにか新しい」といったテーマ通りの空気がここには流れています。
 また、主屋1階ではこれまでJAZZコンサートやコーヒーのワークショップ、リネン服の展示会などさまざまなイベントを開催。さらに、主屋の渡り廊下の先にある「蔵ギャラリー」も、ギャラリーや講演会などを行えるスペースとして一般へ貸し出されています。
 この10月に2周年を迎える深川家住宅では、靴のオーダーメイド・展示販売のイベントや花展が予定されているので、乞うご期待!


時を経てギャラリーとして生まれ変わり、当時客と商人がここで会話を交わしていたように、新たな交流を育んでいます。


昔ながらの急階段を上ると、太い梁が連なる「蔵ギャラリー」。ここに眠っていた骨董品を、時に入れ替え店内に展示。


蔵ギャラリーの土壁。復元工事の際に土壁塗り体験のイベントを行い、参加した市民の協力を経て完成しました。


佐賀の伝統工芸品「肥前名尾和紙」の手すき和紙扇子。その他箪笥の上や床の間など、器や調度品の演出も見どころです。


主屋の一画、ふと見上げるとずらりと並んでいた桶。旧造り酒屋ならではの古道具の演出も味があります。


美味しいコーヒーの淹れ方や地元甘露水についてのワークショップのひとコマ。月1回深川家の珈琲ワークショップも開催中。

居心地のよさ抜群、和みのコーヒータイム

 「初めて来た気がしない」...と、ココイコ記者をすっかりくつろがせたのがランチもできるカフェ。主屋1階、中庭が見える畳の部屋で、知り合いの家に来たようなリラックス感でコーヒーをいただきました。豆はこだわりのオリジナルブレンド、水は安産・子育ての観音様として知られる小城市江里山観音近くで湧き出る「甘露水」で淹れているそう。とてもマイルドな味わいに加え、骨董の器やお膳が目を楽しませてくれます。また、「ようかんまかろん」というまさに「OLD&NEW」な名物も。その味わいは食べてからのお楽しみに!
 人気のランチは、地元の素材をふんだんに使った田舎料理。実はこれ、石体(しゃくたい)地区にある農家民泊「ほのか」のお母さんの手作り。深川家住宅のもう一つのテーマである「地域交流・地域活性」を実現している取り組みの一つなのです。
 主屋2階の「ブックカフェ」は、深川家に所蔵されていた本をはじめとするさまざまな本を自由に読めるスペース。読書の秋を満喫できます。
古いだけでも新しいだけでもない楽しい空間で、人と人のつながりを生んでいる深川家住宅。きっとあなたも、何度でも訪れたくなりますよ。


かつての仏間もあるお座敷。欄間の意匠や床の間のしつらえなども興味深く、何よりほっこり和むのがいいところ。


「ようかんまかろん」に合うように半年かけて最適のブレンドに仕上げたコーヒー。器も素敵だから美味しさ倍増です。


ここで過ごすと時間の流れがゆっくり感じられます。床の間を何気なく見ると、副島種臣の書が掲げられていました。


地元名物・羊羹の薄切りを挟んだ「ようかんまかろん」(1個157円)。2周年記念の「ちょこっとようかん」も発売予定。


こちらも見事な梁が印象的な「ブックカフェ」。年齢を問わず親しまれ、本好きには一日中いても飽きません。


ランチは日替りで、おかず3品に十三穀米ごはん、コーヒー、手作りデザート付き(1,404円税込)。数に限りがあります。

滝と紅葉のライトアップ「清水竹灯り」

 紅葉の時期、小城市をあげての一大イベントとして毎年多くの見物客で賑わう「清水竹灯り」。期間中は深川家住宅から徒歩数分のところからも無料シャトルバスが出ていますので、庭園のライトアップを楽しんだあとにぜひ立ち寄ってみてくださいね。
 「清水竹灯り」の会場は小城のシンボル・清水の滝一帯。無数の竹灯りが小路や橋を柔らかな灯りで照らし、これら光の渦と紅葉、滝が織り成す景色は圧巻です。竹筒に模様を彫ったオブジェなどもあり、そこから漏れる色彩豊かな光もアーティスティック。
 幻想的な景色に感動し、心にも温かな気持ちが灯ります。


昨年の深川家ライトアップ展。毎年11月15日~23日は21時まで営業。


竹灯りと清水の滝が見事に引き立てあった光景です。


竹筒や和紙などを使った表情豊かな灯りの共演に感動。

DATA
【深川家 ―揚羽蝶―】
○住所:小城市小城町上町877
○営業時間:11:00~18:00(11月~5月は11:00~17:00)
○定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
○お問合せ:NPO法人「佐賀県CSO推進機構」TEL 0952-73-1166
公式ホームページはこちら

【清水竹灯り】
○開催期間:11月15日(土)~23日(日)
○開催時間:18:00~21:00 
※清水竹灯りは雨天でも開催します。
※雨天時は足元が悪くなります。すべりにくい履物でお越しください。
○協力金:500円※中学生以下無料
○駐車場:小城公園周辺(約400台収容可能)
※期間中は毎日無料シャトルバスを運行
○お問合せ:清水の滝ライトアップ実行委員会(小城市商工観光課内) 
TEL 0952-37-6129 
公式ホームページはこちら

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