

かつては、肉や魚、惣菜、洋服、金物など生活必需品を扱う店が24軒あったそうで(今は4軒のみ)、八起は買い物途中の絶好の立ち寄りスポットでした。
鳥栖駅のななめ向いにあるショッピングゾーン「ジョイフルタウン鳥栖」。現代の巨大な複合商業施設の存在感とは、全く趣きが異なる商店街がこの隣にひっそりと佇んでいます。まるで時間が止まったままのような「中央市場商店街」。昭和ブームの今なら、格好の撮影スポットになる雰囲気です。
ここで、戦後からキャンデー専門店として生き続けている「八起」。「全盛期だった昭和30年前後は、どの店も人でごった返してましたよ」とご主人の日山軍記さんは語ります。
八起には当時からの常連客も多く、ふるさとを離れた人は数十本単位で注文するという、まさに鳥栖になくてはならない店なのです。
店内も昔のまま。日山さんが描いた水彩画や油絵、戦闘機のペン画などが所狭しと飾られ、独学とは思えない完成度です。絵を通して鳥栖の今昔が伝わってきます。
八起キャンデー・店主(京町店)日山軍記さん
昔ながらの"キャンデー"を作り続けて約50年。自身も甘いものが好きで、飽きることなく食べてきたそう。
店内には趣味で描き始めた絵画が飾られ、鳥栖の町の風景が生き生きと描かれています。この絵に昔を偲ぶ人も多いとか。

全種類制覇したくなる味わい豊かなキャンデー。−40℃の冷凍庫で最初はカチカチに凍っているので、少し柔らかくなるのを待つのがポイント。一本100円から。
八起キャンデーの人気上位はあずきやミルク、たまご味。あずき以外はミルクをベースにチョコやフルーツ味などがあります。着色料や香味料は一切使わず、決まったレシピもなし。長年かけて舌が覚えた感覚を頼りに、いつもの味を完成させます。見た目よりも実際食べるとボリュームがあり、素朴で優しい甘さが身上です。
「ピーク時の夏は、一日3千本売れたことも。店に人が入りきれんかった」と当時を振り返る日山さん。一般家庭にまだ冷蔵庫がなかった頃の話です。現在はテイクアウトがほとんど。ふるさとを離れた人のために地方発送も受け付けています。

夏はこの冷凍庫からキャンデーを取り出し、お客さんに渡します。そういえば、こうやって物を買う光景は少なくなりましたね。テイクアウトは新聞紙に包むのも昔ながら。

もち米は機械でつくものの、米を完全につぶしきらないよう加減することで理想の食感と味わいに。餅は程よく焦げ目をつけながら一つずつ焼いていきます。
キャンデーで名を馳せる八起ですが、冬から春(3月末まで)にかけて提供されるぜんざいもまた、多くの常連客を持つ自慢の味。こちらもレシピはなく、「甘ったらしくならないように」砂糖を微妙に調整しながら鍋に少しずつ作っていきます。佐賀県産のもち米100%の餅と、口当たりなめらかな北海道産の小豆が決め手。餅は一つひとつ網焼きしてからお椀に入れられ、程よい香ばしさで口の中を満たしてくれます。風味といい柔らかさといい、「餅嫌いの子どもがここの餅なら食べられた」と言われたのも納得。
小サイズで350円という安さながら、2個のお餅とたっぷりの小豆はなんたる幸せ。お新香と緑茶を共にいただきながら、まるで親戚の家でごちそうになっているかのような感覚を覚えてしまうのです。
昭和30年頃から登場したぜんざいは、いつしか冬場の名物に。大サイズは500円。他にきなこ餅やしょうゆ餅、いそべ餅もあり、餅好きにはたまりません。

八起には本店の京町店のほか、同市内に大正町店、旭町店がありますが、先述のキャンデー14種のうち6種は旭町限定品。中でも驚かされるのが「ミルク金箔」です。そう、キャンデーに金箔が巻きつき、ピカピカと輝いているではありませんか。これはサプライズ土産に重宝しそう。発想の元は日山さんのご長男とか。豊富なアイデアを発揮し、少しずつメニューを増やしてきました。
ちなみに取材記者が味で驚いた(かつハマッた)のはトマトキャンデー。トマト本来の風味を残しつつ、甘味としてきちんと成り立っている大人の味わいです。
昔ながらの変わらぬキャンデーと、ちょっと遊び心のあるキャンデー、そしてぜんざい。10年、20年経っても、懐かしく味わいたいものです。
左からレアチーズ(120円)、ミルク金箔(400円)、とまと(120円)。その他限定品には珈琲・紅茶・ラズベリー・ビスケット入りレアチーズがあります。
- 京町店
- 住所/鳥栖市京町792-36 TEL/0942-82-2607
- 営業時間/9:30〜21:30
- 大正町店
- 住所/鳥栖市大正町717-3 TEL/0942-82-4468
- 営業時間/9:00〜20:00
- 旭町店
- 住所/鳥栖市儀徳町2746-4 TEL/0942-85-0849
- 営業時間/9:00〜21:00
※各店不定休