800年の歴史ロマンに触れる

間もなく紅葉の季節。御船山も赤く色づく(御船山楽園)。
県西部にある武雄(たけお)市は、黒髪山(くろかみやま)や御船山(みふねやま)に抱かれた、歴史と自然あふれるエリア。日本の名湯の一つ「武雄温泉」も有名です。その武雄で、中世から大切に守られてきた伝統行事があります。疾走する馬の上から的に矢を放つ「流鏑馬(やぶさめ)」です。全国各地に流鏑馬はありますが、鎌倉時代の頃の古式を伝承する武雄のスタイルはとても珍しいとか。その評判がジワジワと広がり、昨年は1万人もの見物客が訪れました。

県内最古の文書も残る、由緒ある武雄神社。樹齢3000年の大楠も。
武雄の流鏑馬が始まったのは、源平合戦の時代にさかのぼります。平家との戦いで苦戦していた源氏が、武雄神社から飛んできた白鷺(しらさぎ)に励まされて勝利したという伝説が…。その真偽はさておき、文治2(1186年)年、源頼朝が武雄神社にお礼の書を送ります。さらに同年9月23日(現在の10月23日)に後鳥羽天皇の勅使と御家人が武雄神社に参詣。その時に武雄領主が流鏑馬を披露したことから、毎年この日に武雄くんちと流鏑馬が行われることになったそうです。

武雄神社から見渡す馬場。直線の砂地が都会にぽっかり浮かぶ。
武雄最初の流鏑馬から今年で822年。八並地区の住民の皆さんが中心となり、流鏑馬神事を保存伝承してきました。近年にいたっては前夜祭の「エイトウ(宵のまつり)」や本番前後の「勅使行列」も再現しました。「全体の儀式の流れを再現したことで、中世の歴史が鮮やかによみがえる。このストーリー性が武雄の流鏑馬の魅力です」と歴史研究家の樋渡敏造気鵑蕨辰靴泙后
華麗なる鎌倉絵巻が始まる

夜遅くまでにぎわう「宵のまつり」。武雄温泉に泊まって楽しんでは?
22日18時〜「宵のまつり エイトウ」
では、武雄の流鏑馬の流れを紹介しましょう。前日22日の前夜祭「宵のまつり エイトウ」から始まります。文治2(1186)年のこの日、武雄に到着した勅使を、甘久(あまぐ)地区で歓待したことにならった行事だとか。18時頃、甘久区民が行列を作って武雄神社へ向かい、神事を行います。その帰路に青竹をたたきながら、はやし言葉「エイトウ」を唄うのです。

夕方の行列「下り馬」は武雄温泉のシンボル・楼門にも立ち寄る。
23日10時40分〜「上り馬(勅使・流鏑馬の行列)」
いよいよ流鏑馬当日です。まずは、後鳥羽天皇の勅使と御家人らに扮した市民総勢100人による行列「上り馬」。武雄温泉駅の北側にある八並地区を出発し、旧長崎街道を経て、武雄神社へ。その約2kmの道のりを1時間かけて練り歩きます。「鎌倉装束にも注目してください。公家や武士など役割の違いが分かりますよ」と樋渡さん。

武雄神社の神輿を運ぶ「御幸(みゆき)」の儀式。下西山地区が担当。
12時〜「神事」お浄め〜神事〜堂廻り〜御幸
やがて行列が武雄神社に到着。勅使と流鏑馬の射手(いて)は「浄めの池」で身を清め、神事に臨みます(神殿に入らない人は、外の地蔵に水をかけて清める)。そして代表である「一の射手」が騎乗して、神殿を3周走る「堂廻り(どうまわり)」。その後、武雄神社の本殿と下の宮との間を往復する神輿(みこし)行列が行われます。

行列馬場見せの後、勅使や御家人たちが馬場正面に配置する。
13時30分〜「行列馬場見せ」
神事が終わると、行列は馬場(ばば)へと移動します。武雄神社の参道に整備された馬場は全長254.54m。ここを行列が行進し、諸役の配置につきます。馬場の北側道路は交通規制により歩行者天国になっていて、露店も並びます。この日は学校も早く終わり、子どもたちも合流。武雄をあげてのお祭りとなるのです。
市民たちの熱意が受け継ぐ

武将の衣装をまとった射手による奉射。馬場の北側道路で見物OK。
14時〜「奉射(ほうしゃ)」
馬場を清める「馬場透し(ばばとおし)」、安全を祈願する「楊扇(ようせん)の儀」といった儀式が終わったら、さぁ、流鏑馬の始まりです。「奉射(梗香の的こうかのまと)」に続いて、9回の「鏡射(きょうしゃ)」が行われます。疾走する馬上から矢を放つ射手には、子どもを含めた地元住民が練習を積んで参加。見事な手綱さばきで、会場を大いに沸かせてくれます。

昨年はポニーに乗った小学生が登場。見事な手綱さばきに大歓声が。
15時10分〜「下り馬(勅使・流鏑馬の行列)」
馬は時速50km以上のスピードで駆け抜け、砂ぼこりが舞い上がり、ひづめの音・躍動感もものすごい迫力です。そんな馬の上から、的を狙うのはかなり難しいはず。「矢が当たったら拍手を。はずれてもその勇姿を称えてくださいね」と樋渡さん。奉射が終わるとすぐ、勅使・流鏑馬の行列が八並地区へと戻る「下り馬」へ。射手が当り的を担って帰り、華麗なる流鏑馬が幕を閉じます。

武雄歴史研究会の会長、樋渡敏造気鵝昨年、流鏑馬の実況を務めた。
「武雄の流鏑馬の特徴は、市民により保存伝承されていること」と樋渡さん。流鏑馬の奉納は八並区、馬場の準備は武雄区、神輿は下西山区、エイトウは甘久区が担当し、伝統を守ってきたのです。戦後の混乱期には一時中断したものの、昭和24年に市民たちの熱意によって復活しました。猛々しい武士の行事は、伝統を伝える象徴として現代によみがえったのです。皆さんも武雄に来て、日本の伝統と郷土愛に触れてみませんか?
「武雄の流鏑馬」スケジュール
10月22日(水)前夜祭
- 宵のまつり(エイトウ) 18時〜23時30分/甘久地区→武雄神社→甘久地区
- 第36回市民綱引大会 16時30分〜21時30分/中町通り(武雄温泉駅北側)
10月23日(木)本祭
- 上り馬 10時40分〜12時/八並地区→武雄神社
- 神事 12時〜13時20分/武雄神社
- 行列馬場見せ 13時30分〜14時/武雄神社参道 (馬場)
- 奉射 14時〜15時/武雄神社参道(馬場)
- 下り馬 15時10分〜16時30分/武雄神社参道→八並地区
<関連イベント>
- 子どもみこし 23日12時〜13時/武雄町内
- おくんちふれあいバザー、おくんちふるまいぜんざい会、育児サークル共同フリーマーケットなど
23日13時30分〜/武雄温泉通り周辺
<駐車場>
- 武雄市役所、文化会館、ゆめタウン、武雄競輪場の駐車場が無料解放されます。
- 10月22日〜23日は「武雄くんち」にともなって交通規制が行われます。
<問い合わせ>
佐賀の流鏑馬カレンダー
10月19日(日)
白石町内の2つの神社で、おくんちに合わせて流鏑馬を開催。妻山神社には、画家の櫻木淳子さんらが描いた流鏑馬の壁画がある。(問)白石町役場TEL0954-65-3111
10月29日(水)
奇岩や巨石がそびえる霊峰・黒髪山が舞台。1154年、鎮西八郎為朝が大蛇退治に成功したお祝いに奉納された…という伝説に基づく。(問)黒髪神社TEL0954-45-2104
11月3日(月・祝)
お神輿のお供の馬が神殿の周りを何回も駆け回る「馬かけ神事」が行われる。流鏑馬とは違うが、こちらも一見の価値あり。(問)鹿島市商工観光課TEL0954-63-3412