特集・文化を紡ぐ道 ― 佐賀市

脊振山系の山懐に抱かれ、自然あふれる山間の村・三瀬とその周辺。うどん文化が根付く佐賀にありながら、そばの文化が根付き始めた地域として注目を集めている。
そばは寒暖の差が大きい山地や荒地に育つことから、関東以北にかけて多く栽培された。関西から九州にかけて温暖な地域ではそばよりもうどんが盛んに食されてきた。佐賀も、豊かな大地に育まれた米や小麦粉の産地で、必然的にうどん文化が根付いていった。
しかし、保存が良く農作物が不作でも比較的収穫量が見込めるそばは救荒作物として重宝されたことから、昔、佐賀県でも山間地の富士町や三瀬村ではそばを自家栽培していたという。収穫して粉にしたそばは湯で練って「そばがき」にしたほか、短い麺にして自宅で食した。

[上左・下左]段々畑一面に咲くそばの花(友田農園)
[上右]「お客さんがおいしい、と言ってくれる間は、地種のそばを作り続ける」と友田泰彦さん
[下中・下右]8月17日には観音様を女の子たちが、翌18日には九郎さんと呼ばれる石像を男の子たちが、川で洗い清める風習が残り、今も祭りと地域が密着した生活がある。
「そばがき」の味を知るのが、富士町上合瀬地区に住む友田農園の友田泰彦さん(81歳)だ。「私が3〜4歳の頃は、どこの農家も作っていた」と友田さん。祖母が作るそばがきにしょうゆやみそをつけ、おやつ代わりに食べていたそうだ。
友田さんは地元で作られていた在来種(地種)を残そうと活動する北山そば保存会(会員30人)の中心メンバーでもある。自らもそば処を営み、無農薬で栽培した地種のそばを打って振る舞う。「地種は成長具合が違い、実の大きさが不ぞろいで収穫の時期がばらばらになるなど効率が悪い。でも、そばの香りと味のよさは抜群」と話す。
そばは8月中旬に種をまく。かつて、種をまく時期は「観音さんの日(8月17日)からお地蔵さんの日(8月24日)までの1週間」と、祭りが基準になっていた。1カ月後には白い花を咲かせ、2〜3カ月後にそばの実がなる。「畑がやせていると、過酷な状況で種を保存しようとそばは早く大きくなる。栄養がたっぷりあると、そばも危機感なくゆっくり育つようだ」と友田さん。「若いうちに収穫して、熟成させれば一段と香りも味わいも深くなる」と続ける。
友田さんは三瀬村や富士町にそばの文化が根付きはじめたことについて「こだわりの職人たちをこの地に引き寄せたのは、豊かな自然と夏でも涼しい気候、そして地下から沸き出す良質の水があるから」と分析する。福岡市などの都市部から1本道が通り、行き来しやすくなったのも一因だ。
三瀬とその周辺には、12軒もの個性豊かなそば処が集まり、「そばの道」と呼ばれる新しい文化が生まれている。

[左]/地種のそばは、成長がまちまちで粒が不ぞろい
[中]友田さんが営むそば店「木漏れ陽(こもれび)」では、手打ちの二八そばと栄養たっぷりのそばの芽が味わえる
[下]友田さんが開発した高血圧予防に効果があるルチンをたくさん含むそばの芽を簡単に育てられるキット「ヤッさん畑」。水を与えるだけで成長し、1〜2週間で食べごろになる


日本の原風景である田園が残る山里の村・三瀬からそば処が点在する三瀬のそば街道。そこではそばにこだわりを持つそば職人12人が自慢のそばを振る舞う。そばの奥深さに魅了され、仕事を辞め、そば職人の修行をした人もいる。標高400メートルのさわやかな自然環境と地下から沸き出るおいしい水にひかれ、この地に集まってきた。
そばの材料はそば粉(とつなぎ粉)と水だけと実にシンプル。それだけにごまかしはきかない。職人のこだわりが、そばの味にそのまま出る。そば粉の割合も、それぞれ違う。そば粉は職人によって10割だったり、8割だったり、のど越しを考え、比率とめんの太さを決める。そばを自家栽培する職人もいる。北海道産や長野産、茨城産など国内から選りすぐったそばを石臼で挽くなど手間も暇もかける。そばの香りと味を邪魔せず、引き立ててくれるつゆの作り方もそれぞれのやり方がある。
「本格的な手打ちを田舎で味わう」のが、三瀬のそば街道の醍醐味。都会の喧騒から離れ、ゆったりと時が流れる田舎で、のんびりとそばの味を楽しんでほしいとの願いは、どの職人にも共通する思いだ。通りから離れた静かな場所に建つ店、古民家風の店、庭が自慢の店、和の落ち着いた空間が広がる店など、三瀬の風景に溶け込んだ雰囲気のよさに、そばの味がひと味もふた味も違ってきそうだ。
たかが「そば」されど「そば」。小さなそばの実1粒から作られるそばの味は、12人の職人によって12様の味を生み出している。ぜひ、そば通のあなたをうならせる極上のそばを発見してほしい。

三瀬そば街道には、庭が自慢の店や、古民家風の店など個性が光るそば処が並ぶ。心地よい空間で、極上のそばを味わってもらいたい

盛りそばや創作そばなど、各店ごとに趣向を凝らしたそばが堪能できる。地の物を使ったサイドメニューもおすすめ
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広大な敷地内で自然や動物と触れ合うことができる観光牧場。ローラースライダーで遊んだり、乳搾りやパンづくりなどの体験など親子で終日楽しめる人気のスポット。
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恵比寿DEまちづくりネットワーク
佐賀市内のあちこちで見ることができる恵比寿さま。その数は実に420体以上、日本一と言われている。ガイドの案内で恵比寿さま巡りをしよう。ご利益があるかも。
案内/佐賀市中心市街地、長崎街道沿い 時/9:00〜17:00
料/ガイド1人あたり1時間500円(有料施設、駐車場は自己負担)
問/TEL:0952-40-7100 ※1週間前までに要予約
(佐賀市商工振興課内 恵比寿DEまちづくりネットワーク事務局内)


佐賀県には、活きのいい魚に、
軟らかいお肉、みずみずしい野菜など、
日本国中どこにも負けない
おいしいものがいっぱい。
ローカルで育った「ご当地グルメ」を
食べ尽くしませんか。
ひと口、食べれば、
昭和レトロの香りが広がる
昭和50年代生まれの喫茶店メニュー
温かいごはん、炒めた肉、すべてを覆うように彩りも美しい生野菜がたっぷり1枚のプレートの上で重なり合う。仕上げはマヨネーズをかけるだけ。これが佐賀市のご当地グルメ「シシリアンライス」の基本形だ。プレートの中でいくつもの食材が絡み合い、スプーンを運ぶたびに食感が変化する味がうけ、喫茶店メニューとして定着してきた。
昭和50年代、佐賀市中心街の喫茶店で登場した。ルーツはまかない料理だったとか、諸説あるが、なぜ「シシリアンライス」というネーミングなのか、30年以上経った今では、はっきりしたことはわからない。そのミステリアスさも、ご当地グルメ「シシリアンライス」の注目度を上げている。現在、シシリアンライスが味わえるのは佐賀市内で20数件。時代とともに店ごとにアレンジを加えているため、それぞれ異なった味を楽しめる。登場当時の昭和に思いを馳せ、ひと口食べれば、昭和の香りが広がってくるかもしれない。
